お酒は体に悪い?|「1杯だけ」でも、がんのリスクが上がる可能性があります

✅ 今日の結論
- お酒は、WHOの機関(IARC)の発がん性分類で「グループ1(ヒトに対する発がん性が確実)」に入っています。以前お話ししたアスパルテームの「グループ2B」より、ずっと強い分類です
- アメリカの最新研究では、飲酒に関連するがんの死者数が33年間で倍以上に増えました
- 日本人を対象にした追跡調査でも、1日2〜3合の飲酒でがん全体のリスクが1.4倍になっています
- 顔が赤くなる体質の人は、少量の飲酒でもリスクが上がることが分かっています
⏱ 約5分で読めます。晩酌の前にどうぞ🍵
2025年8月、アメリカの研究者が発表した論文がニュースになりました。「1日1杯のお酒でも、がんの死亡リスクが上がる可能性がある」という内容です。

がんとお酒って、そんなに関係あるの?よく聞くのはタバコだけど……
実は、お酒の発がん性はタバコと同じくらい、はっきりしています。今日はその根拠と、日本人のデータ、そして「顔が赤くなる人」に知っておいてほしいことをお話しします。
アメリカでは、飲酒関連がんの死者が33年で倍増しました
マイアミ大学の研究チームが、2025年8月31日に医学誌「ランセット・リージョナルヘルス」に発表した論文です。アメリカで30年以上集められたデータを分析しています。
- 飲酒に関連するがんによる死者数は、1990年の年間1万1361人から、2023年には2万3126人へ
- 高齢の男性では、33年間で死亡率が約24%増加
📖 出典:CNN.co.jp「飲酒は1日たった1杯でもがんの死亡リスク増大の可能性 米研究」(2025年8月)
対象になっているのは、乳がん、前立腺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、食道がんなど。お酒に関係するがんの種類は、思っているより多いのです。
実は、お酒は「確実に発がん性あり」に分類されています
以前、アスパルテームの記事で、WHOの機関IARCの発がん性分類をご紹介しました。覚えていらっしゃるでしょうか。
- グループ1=ヒトに対する発がん性が確実(アルコール飲料、加工肉、タバコなど)
- グループ2A=おそらく発がん性がある(非常に熱い飲み物、赤肉など)
- グループ2B=発がん性がある可能性がある(アスパルテーム、漬けもの、わらびなど)

お酒って、アスパルテームより強い分類だったの?

そうなんです。お酒そのものだけでなく、体の中でできる「アセトアルデヒド」も、同じグループ1です
アルコールは、体の中でアセトアルデヒドという物質に分解されます。このアセトアルデヒドも、IARCでグループ1に分類されています。お酒は、飲んだ本人の体の中で、二重に発がん物質と向き合っていることになります。
グループ1の中には、加工肉やタバコも並んでいます。「量に関係なく危険」という意味ではありませんが、「証拠の確からしさ」がいちばん高い分類だということは、知っておいて損はありません。
日本人のデータでは、こうなっています
アメリカの研究だけでなく、日本人を対象にした調査もあります。国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)です。
40〜59歳の男女約7万3000人を、2001年まで追跡した調査です。以下は、そのうち男性の「がん全体」の発生率について、時々飲む人を基準に比べた結果です。喫煙別の行は、それぞれの喫煙区分内で時々飲む人と比較しています。
| 男性の飲酒量(日本酒換算・1日平均) | がん全体の発生率 |
|---|---|
| 2合未満 | この研究では、統計学的に明確ながん全体のリスク上昇は確認されませんでした。 |
| 2〜3合未満 | 1.4倍 |
| 3合以上 | 1.6倍 |
| 2合以上3合未満+喫煙 | 1.9倍 |
| 3合以上+喫煙 | 2.3倍 |
| 喫煙歴のない男性 | この研究では、飲酒量の各区分で、統計学的に明確ながん全体のリスク上昇は確認されませんでした。 |
これは「安全な飲酒量」を示すものではなく、この研究の対象者と条件の中で、統計学的に明確な差が確認されなかったという意味です。
口腔・咽頭・食道・肝臓・喉頭のがんに絞った分析では、喫煙歴のない男性でも多量飲酒の区分でリスクの推定値は高くなっていました。ただし、この集団では統計学的に明確な上昇とは確認されていません。「がん全体」の結果を、個々のがんや「たばこを吸わなければ飲んでも大丈夫」という判断に広げることはできません。
📖 出典:国立がん研究センター「飲酒とがん全体の発生率との関係について」/原論文(表2・表3)
「1合」は、日本酒なら180ml、ビールなら中瓶1本(約500ml)、ワインならグラス2杯くらいが目安です。研究チームは、「1日1合程度までに控えたほうがよい」と結論づけています。

お酒とタバコの両方をする方は、リスクがさらに重なることも分かります。片方だけの対策では、半分しか効果がないということです。
顔が赤くなる人は、特に知っておいてほしいこと
ここからは、日本人に特に関係の深い話です。
お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる方、いらっしゃいますよね。これは「フラッシング反応」と呼ばれ、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い体質のサインです。

顔が赤くなるのって、ただの体質じゃないの?
体質であることは間違いありません。ただ、その体質が、がんリスクにも関係しているという調査結果があります。
国立がん研究センターが約5万7000人を追跡した調査では、こんな結果が出ました。
- フラッシング反応がない人は、週450g以上のかなりの大量飲酒でリスクが上がる
- フラッシング反応がある人は、少量の飲酒でも飲酒関連がんのリスクが統計的に有意に上がる
📖 出典:国立がん研究センター「フラッシング反応別にみた飲酒とがん罹患リスクとの関連について」

「うちの人はお酒が弱いから安心」ではなく、むしろ逆かもしれません
お酒に弱い=分解する力が弱い、ということです。「弱いから少ししか飲まない」のではなく、体質的に少しの量でも負担が大きいと考えたほうが正確です。
今日、持って帰っていただきたいこと
- お酒は、IARCの発がん性分類で「グループ1」。証拠の確からしさは、いちばん高い分類です
- アメリカでは、飲酒関連がんの死者が33年で倍増しています
- 日本人のデータでも、1日2〜3合の飲酒でがんリスクは1.4倍。目安は1日1合程度です
- 顔が赤くなる体質の人は、少量でもリスクが上がることが分かっています
「お酒をやめましょう」とお伝えしたいわけではありません。知らずに飲むのと、知ったうえで飲むのとでは、選び方が変わる——それだけです。
今晩、もし1杯多く飲もうとしたときに、この記事を思い出していただけたら十分です。
※本記事は各種調査研究の内容を紹介したものです。特定の飲酒習慣を推奨・禁止するものではなく、病気の予防・治療の効果を示すものでもありません。飲酒量については個人差があり、持病のある方、アルコール依存症の治療中の方、妊娠中の方は、医師の指導に従ってください。

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